涙は出ない。
どこか壊れたのかもしれない。
夜、母の事を想った。
決して贅沢はせず、慎ましく過ごしていた母。
本当に幸せだった?
楽しかった?
親不孝な息子、
社会人になっても迷惑ばかりかけてきた。
ようやく落ち着いてきたこの頃、
親孝行ができる歳になってきたと思ったのに・・・。
「親孝行したいときには親はなし。」
本当にその通りだ。
言い訳に過ぎないか。
翌日、お通夜が行われた。
親族のみで静かに行うようにしたが、
近くに住む友人達は参列してくれた。
まだ、人が集まらないうちに、ふと棺の中で寝ている母の
頬をさわってみた。
それは冷たく、硬直していた。
ここにはもう、母はいないのだ。
そう実感したのか、涙がこぼれた。
今まで、何かに抑えられていたかのように
涙はずっと、ずっと止まらなかったんだ。
その翌日の告別式もずっと。
まるで赤子のようだった。
そして母は焼かれ、本当に天に召された。
この現実を受け入れなければいけない。
悲しみは何よりも大きく、それは時間でしか
解決できないのだろうと思われた。
頭を意図的に切り替え、すぐに仕事に復帰した。
しばらく休んでしまったから、少しの間はその穴埋めで
気が紛れるだろう。
決して忘れない、忘れられない。
これから私ができることは、
私が幸せになることだ、それが母の願いだろう。
それが親孝行になることを信じよう。
つづく

↑ぽちっとしてくれるとうれしいなっと。